2006年03月12日

『はだいろ』を恥じる支離滅裂

先日、現代社会のなかで横行する“コトバ狩り”について考えさせられる場面があった。

久しぶりに文具店へ行き、甥っ子のために16色入りのクレヨンを購入したときのことだ。何気なく裏箱を眺めていたら、そこに並んだ色の名称のなかに、見なれないカタカナ語を見つけた……

ペールオレンジ。

即座に強い違和感を覚えた。なぜなら、そのクレヨンの色はどう見ても『はだいろ』だったから。
ペールオレンジ? なぜ幼児にそんなイメージに乏しい伝えかたをするのだろう。聞けば、今では『はだいろ』はその存在自体が悪しき“差別用語”であり、教育現場で口にしてはならない禁句なんだと言う。

唖然(あぜん)とした。

たしかに、幼稚園や小学校の学習課程で、肌の色をいわゆる『はだいろ』だけに限定するような偏向が見受けられるなら、それは(昨今のグローバル標準に照らし合わせて)“人種差別”とも受け取れる。教育者としての配慮が期待されるべきだ。しかしこれは、そういうお決まりの悪慣行として糾弾されるたぐいの事象なのだろうか? 
よしんば、仮にも『はだいろ』という色彩表現を知らないまま成人した日本人なら、黒い肌の人の顔色を黄色人種と同じくらい微妙に見分けられたり、初めて出会う白い肌の人にも生理的に慣れ親しみやすい…とでも言うのだろうか? 別の肌色をした幼児が通う幼稚園で保育士が、「これはハダイロ。日本人のコたちの肌の色ですよぉ」とその子に教える行為は、国際的に許しがたい人種差別なんだろうか?

頭ごなしに差別慣行のひとつと決めつける前に今一度、冷静に考えてほしいのだ──『はだいろ』は、この国の成り立ちのなかで誰が強制するでもなく生まれてきた、悪意のない潔白なコトバである、ということを。

この島の連綿たる暮らしのなかで発生してきた土着のコトバである以上、当然、日本列島に住み着いた多数派民族の身体的特徴を下敷きに“命名”される。単にそれだけのことであって、特段、別の民族や人種を蔑(さげす)む意図が潜んでいるワケではない。

今しがた<悪意のない潔白な>と書いた。『はだいろ』を咎(とが)めるくらいなら白を善、黒を悪と刷り込む?この『潔白』というコトバだって“立派な”差別語にならないか? 白星、白無垢、ひるがえって暗黒、腹黒…等々は使用を禁じるべきか? 病院での白衣は不見識で、罰則で縛ってでも黒装束と混用すべきか? 喪服や弔問着には黒を避け、ウェディングドレスには出来る限り着色するよう見直すべきなのか?

コトバも色も文化。コトバや色は歴史。まして色の呼び名から受けるイメージに至っては、上っつらの文字を排除したところで意識から消去できるハズもない──そんなことは誰もがワカっていても、どこからか難癖がつけば(たちどころに)見境もなく隠す。不用意に“訂正”する。そういう行為を『ゴマカし』というのだ。どこまでも場当たり的で、どっしり構えたビジョンがない。

Q:「ナンで黄桃色を“肌色”呼ばわりするのか!」
A:「ニッポンは昔、黄色人種が多かったために、自分たちの肌の色になぞらえたのです」
Q:「なぁるほど。それなら(差別でないことが)ワカりました」

誰が『はだいろ』にケチをつけたのかは知らない。ただ誰であったにせよ、たったこれだけの説明が(明快で真正な論拠がありながら)なぜ出来なかったのか。いったいどこに、後ろめたい気持ちが生じ得るのか。こういう無抵抗の積み重ねが、あげく靖国神社参拝問題のようなニッポン人の《逆ギレ》の火に油を注ぐ結果となっている?なら怖い話だ。

確たる自信がないから。せめて見てくれだけでも整えたいから。
──それだけに翻弄され右往左往する存在は、あまりに軽薄で、無思慮で、臆病で…つまるところ『虚衆』的である。思い返せば、逮捕された虚業家は(まだ若者たちから絶大な支持を得ていた時分)コトあるごとに「想定の範囲内」と薄笑いの“思慮深さ”を演出し、忌憚のない意見をあけすけに表明して“臆病でない”態度を装っていた。

だからこそ彼は支持されたし、若者の多くがダマされたのだ。誰もが<軽薄で臆病な日本人>には飽き飽きしていたから。遠からず今回の事件が忘れ去られても、このことだけは心して記憶にとどめるおくべきであろうと思う。
posted by 想定ペンギン舎 at 01:54| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(1) | 雑言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TB.コメントありがとうございます。

肌色が差別用語になったのは外圧があったみたいですが・・・。
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2002080279138

本来差別用語では無いのですが、日本らしいことなかれ主義ですかね・・・。

>本古来の色の名前に、この色を当てはめたのでこの色名がつきました。
>慣例的に呼び習わされてきた言葉が「肌色」で人種差別用語ではありません。
http://www.alps.or.jp/match/hiroba/a/009.html
Posted by para080 at 2006年03月13日 00:10
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